アナタもできちゃう!地震予測7- 2022年版と2015~2021年の予測の結果

2023/02/05

滋賀県立大教授の小泉尚嗣さんから、「アナタもできちゃう!地震予測」の第7弾のお知らせがありました。
この方法より“当たる”地震予測があるならそれは一考の価値ありですが、今のところなさそうです。

小泉さんの方法ほど、震度とマグニチュードを混同することなく、あらゆる条件・表記が公明正大な予測は他にありません。
なぜ公明正大なのかを知りたい方は、地震予測6の冒頭を覧ください。

(以下、滋賀県立大教授・小泉尚嗣氏寄稿)

はじめに

前回の報告(2021年2月)に引き続き,同様の手法で2019-2021年の地震活動をもとに,2022年の各都道府県における震度4以上の地震の予測を行います.

2022年における1年の予測と,各3ヶ月の予測です(実際は,2022年以降の任意の365日間および91日間の予測です).
後半では,同様のやり方でおこなった,2015~2021年の予測結果の検証も行います.

発生確率の考え方

気象庁震度データベースを用いて,2019年~2021年の3年間に各都道府県で震度4以上の地震を記録した回数を調べると以下のようになりました.
(各都道府県で震度4以上であった地震なので,その都道府県直下におこった地震とは限りません.また,大きい地震だと,複数の都道府県で震度4以上になるので,地震が重複する場合もあることに注意してください.)

30:茨城
21:栃木
18:鹿児島
17:宮城,福島
16:千葉
15:岩手
12:青森
11:北海道,東京
10:群馬,埼玉
6:岐阜,熊本
5:秋田,神奈川,山梨,静岡,和歌山,宮崎
4:山形,新潟,長野,愛媛
3:石川,広島,徳島
2:高知,大分,沖縄
1:富山,福井,愛知,三重,兵庫,香川,山口,福岡
0:滋賀,京都,大阪,奈良,鳥取,島根,佐賀,長崎

3年間の日数(365日✕2+366=1,096日)を上記の回数で割れば,それぞれの都道府県(場所)について平均の地震発生間隔T(日)が出てきます(0回については,Tが無限大とみなし,下記の確率は0とします).

震度4以上の地震の発生がポアッソン分布に従う(=一定の頻度でランダムに発生する)とすると,t日以内に震度4以上の地震が1つ以上発生する確率は1-exp(-t/T)という簡単な式になります.
ここで,exp(-t/T)とはe(自然体数の底:2.718281828・・・)の(-t/T)乗を意味します(この式の出し方については,こちらの記事をご覧ください).
「一定の頻度でランダムに発生する」というのがわかりにくいと思いますが,サイコロが良い例です.
サイコロの目は,1回振るごとにランダムに出ますが,平均すると6回に1度同じ目が出ます.
たとえば「1」の目は,6回に1度の頻度で(一定の頻度で)ランダムに出てきます.

tに365日を入れれば,1年間の発生確率.91日をいれれば91日間(約3ヶ月)の発生確率が出てきます.

確率70%以上で「震度4以上の地震あり」という予測をし,
確率30%未満で「震度4以上地震なし」という予測をし,
確率30%以上70%未満で「不明(注意)」という予測を出すとすると,
実際には、
3年で4回以上発生していると年間予測が「赤」になり,
3年で1回以下なら年間予測は「青」になります.
また,3年間で15回以上発生していると3ヶ月予測は「赤」
3年で4回以下なら3ヶ月予測は「青」となります.
計算はともかく,原理的には非常に単純なものと思ってください.

未来の予測

2022年の1年間で震度4以上の地震が起こるかどうかの予測

[A1]1年間で震度4以上の地震の発生確率が70%以上の都道府県
24カ所24カ所で年間予測「赤」
茨城,栃木,鹿児島,宮城,福島,千葉,岩手,青森,北海道,東京,群馬,埼玉,岐阜,熊本,秋田,神奈川,山梨,静岡,和歌山,宮崎,山形,新潟,長野,愛媛
[A2]1年間で震度4以上の地震の発生確率が30%未満の都道府県・地域
17カ所17カ所で年間予測「青」
富山,福井,愛知,三重,兵庫,香川,山口,福岡,滋賀,京都,大阪,奈良,鳥取,島根,岡山,佐賀,長崎
[A3]1年間で震度4以上の地震の発生確率が30%以上70%未満の都道府県・地域
6カ所6カ所で年間予測「黄」
石川,広島,徳島,高知,大分,沖縄

図1:2019~2021年の地震活動を元にした、2022年の1年間(365日間)の震度4以上の地震発生予測.図の作成には「白地図ぬりぬり」というツールを使用.他の図も同様.

2022年の各3ヶ月間で震度4以上の地震が起こるかどうかの予測

[B1]91日間で震度4以上の地震の発生確率が70%以上の都道府県・地域
7カ所7カ所で3ヶ月予測「赤」
茨城,栃木,鹿児島,宮城,福島,千葉,岩手
[B2]91日間で震度4以上の地震の発生確率が30%未満の都道府県・地域
27カ所27カ所で3ヶ月予測「青」
山形,新潟,長野,愛媛,石川,広島,徳島,高知,大分,沖縄,富山,福井,愛知,三重,兵庫,香川,山口,福岡,滋賀,京都,大阪,奈良,鳥取,島根,岡山,佐賀,長崎
[B3]91日間で震度4以上の地震の発生確率が30%以上70%未満の都道府県・地域
13カ所13カ所で3ヶ月予測「黄」
青森,北海道,東京,群馬,埼玉,岐阜,熊本,秋田,神奈川,山梨,静岡,和歌山,宮崎

図2:2019~2021年の地震活動を元にした3ヶ月(91日間)の震度4以上の地震発生予測.

過去(2021年)の予測の評価

さて,上記の手法はどれくらい当たるのか(外れるのか)を見てみましょう。

1年予測の成績

2018~2020年の地震活動から,2021年の1年予測を行ったときの成績を示します.

図3:左図:2021年の1年予測(赤・青・黄は図1と同じ意味),右図:2021年の1年間で震度4以上の地震を記録した都道府県(白)と地震が起こらなかった都道府県(黒)

[A1]1年間で震度4以上の地震の発生確率が70%以上の都道府県()は18箇所で,そのうち17カ所で震度4以上の地震が発生しました.
[A2]1年間で震度4以上の地震の発生確率が30%未満の都道府県()は15カ所で,そのうち7カ所では地震が発生し8カ所では地震が発生しませんでした.なお,震度4以上の地震が発生しなかった都道府県は15カ所です.
[A3]1年間で震度4以上の地震の発生確率が30%以上70%未満の都道府県・地域()は14カ所で,そのうち8カ所で地震が発生し6カ所では地震が発生しませんでした
※地震が,同じ都道府県で期間内に複数回発生したとしても1回とカウントしていることに注意してください.A1~A3のカウントの仕方だと,震度4以上の地震は1年間で17+7+8=32回起きたことになります.

2021年1年予測の成績
適中率: 17/18=0.9494%
予測率: 17/32=0.5353%
安心率1: 8/15=0.5353%
安心率2: 8/15=0.5353%

予測を評価する指標
 適中率震度4以上の地震が発生すると予測した都道府県のうち、地震が発生した割合
 予測率:震度4以上の地震が発生した都道府県のうち、地震が発生すると予測した割合
予測を評価する指標
 安心率1震度4以上の地震が発生しないと予測した都道府県のうち、地震が発生しなかった割合
 安心率2:震度4以上の地震が発生しなかった都道府県のうち,地震が発生しないと予測した割合
・どの数値も高いほど成績が良いことを示します.
予測については評価しません.

適中率と予測率(予知率)は,1977年に地震学者の宇津が提唱した地震予測(地震予知)の評価の指標です.
「赤」予報をいっぱい出すと予測率は上がりますが,適中率は下がります.
絶対確実と思われるときだけ予報を出して当てると,適中率は上がりますが,予測率は下がります.
地震予報(地震予知)が有効かどうかは,適中率と予測率の両方を見なくてはいけません.

3ヶ月予測の成績

続いて,2021年の3ヶ月予測の成績です.こちらについては煩雑になるので図示しません.

[B1]3ヶ月間で震度4以上の地震の発生確率が70%以上の都道府県()は4カ所でした.1~3月,4~6月,7~9月,10~12月の4クールそれぞれで予測をしたとして,震度4以上の地震が発生すると予測したのは16回となります.そのうち10回地震が発生しました.
[B2]3ヶ月間で震度4以上の地震の発生確率が30%未満の都道府県()は30カ所でした。上記と同様に4クールそれぞれ予測をしたとして,震度4以上の地震が発生しないと予測したのは120回となります.そのうち96回は地震が発生しませんでしたが,24回は発生しました.なお,4クールそれぞれでカウントすると、震度4以上の地震が発生しなかった都道府県は126カ所でした.
[B3]3ヶ月間で震度4以上の地震の発生確率が30%以上70%未満の都道府県()は13カ所ありました.上記と同様に,4クールそれぞれ予測をしたとして,不明(注意)と予測したのは52回となります.そのうち28回地震が発生しました.
B1~B3のカウントの仕方だと、震度4以上の地震は、10+24+28=62回発生したことになります。

2021年3ヶ月予測の成績
適中率: 10/16=0.6363%
予測率: 10/62=0.1616%
安心率1: 96/120=0.8080%
安心率2: 96/126=0.7676%

過去(2015~2021年)の予測評価のまとめ

2015年から、直近3年の地震活動によって翌年の地震を上述のように予測しています。
その結果である適中率と予測率の推移と平均値を、以下の表にまとめました.

表1 2015~2021年の1年予測の評価のまとめ

2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 平均
適中率 0.90 0.94 0.62 0.75 0.67 0.72 0.94 0.79
予測率 0.59 0.46 0.89 0.50 0.62 0.57 0.53 0.59

表2 2015~2021年の3ヶ月予測の評価のまとめ

2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 平均
適中率 0.75 0.75 0.57 0.53 0.64 0.83 0.63 0.67
予測率 0.53 0.29 0.68 0.33 0.37 0.21 0.16 0.37

1年とか3ヶ月といったある程度長い間隔で,震度4以上の地震といった発生頻度の高い地震を対象とする
このような2つの条件を満たすと簡単な方法かつかなりの確率で誰でも地震が予測できるということを知ってもらえたらと思います.

参考文献
小泉尚嗣・今給黎哲郎,2016,震度データを用いた地震の中期予測 -地震発生の「相場観」を理解してもらうために-,地震ジャーナル,62,35-40.
小泉尚嗣,2021,「タダで」できる地震予測はどれくらい当たるか?,日本地震学会広報誌なゐふる,127,2-3.