アナタもできちゃう!地震予測2 図解バージョン

2019/04/29

「アナタもできちゃう!地震予測」を開発された元産業総合研究所・現滋賀県立大学の小泉尚嗣さんが、第2弾の図解バージョンを提供してくださいました!

まずは、スクロールして図を見てください。
どこかの誰かの予測に酷似していませんか!!!???
ほ~ら興味が出てきた。
興味が出てきたら、自分が読める文章だけ読んでみましょう。
すると、「おお、これなら『当たった!』って言っちゃうよね!」
というに違いありません。

確率的に当たり前なので、アナタでもできちゃうわけです。
これと同様の結果を出しているちまたの予測屋の予測は、「科学的観測の下の予測」といっていいのでしょうか?
ぜひ、ご自身で考えてみてください。

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2013-2015年の地震活動をもとに,2016年の各都道府県における震度4以上の地震の予測を行います.2016年1年の予測と,各3ヶ月の予測です.(実際は,2016年以降の任意の365日間および91日間の予測です.)また,後半で2012年~2014年の地震活動を元に,2015年の震度4以上の地震を予測した場合の検証の結果も示します.

少し長いですがおつきあい下さい.興味を持たれた方は是非,自分でもいろいろアレンジして予測してみて下さい.

気象庁震度データベースを用いて,2013年~2015年の3年間に各都道府県で震度4以上の地震を記録した回数を調べると以下の様になりました.
(各都道府県で震度4以上であった地震なので,その都道府県直下におこった地震とは限りません.また,大きい地震だと,複数の都道府県で震度4以上になるので,地震が重複する場合もあることに注意して下さい.)

34回:茨城
30回:福島
25回:栃木
21回:宮城
19回:岩手
17回:青森
16回:北海道
14回:埼玉・千葉
10回:神奈川
9回:群馬
8回:鹿児島(島嶼部)
7回:長野
6回:東京(島嶼部以外)
5回:鳥取,沖縄
4回:和歌山,宮崎
3回:東京(島嶼部),新潟,石川,徳島,愛媛,高知,熊本
2回:秋田,山梨,静岡,愛知,京都,大阪,岡山,広島,香川,福岡,佐賀,大分,鹿児島(島嶼部以外)
1回:山形,富山,岐阜,滋賀,兵庫,奈良,島根,山口
0回:福井,三重,長崎

東京都と鹿児島は,島嶼部とそれ以外の地域に分けているので合計49カ所になります.3年間の日数(365日*3=1,095日)を上記の回数で割れば,それぞれの都道府県(場所)について平均の地震発生間隔T(日)が出てきます.(0回については,Tが無限大と見なし,下記の確率は0とします.)

震度4以上の地震の発生がポアッソン分布に従う(=一定の頻度でランダムに発生する)とすると,t日以内に震度4以上の地震が1つ以上発生する確率は1-exp(-t/T)という簡単な式になります.ここで,exp(-t/T)とはe(自然体数の底:2.718281828・・・)の(-t/T)乗を意味します(この式の出し方については,後半に「参考」で説明します).「一定の頻度でランダムに発生する」というのがわかりにくいと思いますが,サイコロが良い例です.サイコロのどの目がでるかは,1回振るごとにランダムに出ますが,平均すると6回に1度出ます.たとえば「1」の目は,6回に1度の頻度で(一定の頻度で)ランダムに出てきます.

tに365日を入れれば,1年間の発生確率.91日をいれれば91日間(約3ヶ月)の発生確率が出てきます.

確率70%以上で「震度4以上の地震あり」という予測「赤」をし,
確率30%未満で「震度4以上地震なし」という予測「青」をし,
確率30%以上70%未満で「不明(注意)」「黄」という予測を出すとすると,
(ご自分で予測されるときは,適宜この基準を変えてみてください.)

ちなみに,t/Tが1.21以上なら確率が70%以上になり,0.35以下なら確率は30%未満になります.ここもサイコロのたとえで説明します.計算の詳細は省略しますが,サイコロを7回以上振れば特定の目(たとえば「1」)が1回以上出る確率は70%以上になります.他方,サイコロを振る回数が2回以下ならば,特定の目が出る確率は30%程度かそれ以下です.上記の予測は,サイコロを7回以上ふれば「1」が1度は出ると予測し,サイコロを振る回数が2回以下なら「1」はでないと予測するようなものです.計算はともかく,原理的には非常に単純なものとおもってください.

計算の結果
1年予測(図1)
A1.1年間で震度4以上の地震の発生確率が70%以上の都道府県・地域:18箇所→18カ所で年間予測「赤」
北海道,青森,岩手,宮城,福島,茨城,栃木,群馬,千葉,埼玉,東京(島嶼部以外),神奈川,長野,和歌山,鳥取,宮崎,鹿児島(島嶼部),沖縄
A2.1年間で震度4以上の地震の発生確率が30%未満の都道府県・地域:11カ所→11カ所で年間予測「青」
山形,富山,岐阜,福井,滋賀,三重,奈良,兵庫,島根,山口,長崎
A3.1年間で震度4以上の地震の発生確率が30%以上70%未満の都道府県・地域:20カ所→20カ所で年間予測「黄」
秋田,新潟,石川,山梨,静岡,愛知,東京(島嶼部),京都,大阪,岡山,広島,香川,徳島,愛媛,高知,福岡,佐賀,大分,熊本,鹿児島(島嶼部以外)

図1:2013-2015年の地震活動を元にした1年(366日間)の震度4以上の地震発生予測.小泉・今給黎(2016)より.
地震予測1

3ヶ月予測(図2)
B1.91日間で震度4以上の地震の発生確率が70%以上の都道府県・地域:7箇所→7カ所で3ヶ月予測「赤」
北海道,青森,岩手,宮城,福島,茨城,栃木
B2.91日間で震度4以上の地震の発生確率が30%未満の都道府県・地域:33カ所→33カ所で3ヶ月予測「青」
秋田,山形,新潟,富山,石川,福井,東京(島嶼部),山梨,静岡,愛知,岐阜,三重,滋賀,京都,大阪,奈良,和歌山,兵庫,岡山,広島,島根,山口,香川,徳島,愛媛,高知,福岡,佐賀,長崎,大分,宮崎,熊本,鹿児島(島嶼部以外)
B3.91日間で震度4以上の地震の発生確率が30%以上70%未満の都道府県・地域:9カ所→9カ所で3ヶ月予測「黄」
群馬,埼玉,東京(島嶼部以外),千葉,神奈川,長野,鳥取,鹿児島(島嶼部),沖縄

図2:2013-2015年の地震活動を元にした3ヶ月(91日間)の震度4以上の地震発生予測.小泉・今給黎(2016)より.
地震予測2

さて,上記がどれくらい当たるのか(外れるのか),2015年1月1日に,2012-2014年の地震活動から同様の予測を2015年1月1日に行ったとしたときの成績を示します(このときは,東京も鹿児島も全域で計算しました).

まずは2015年の年間予測の成績です.

A1.1年間で震度4以上の地震の発生確率が70%以上の都道府県は21箇所で,そのうち19カ所で震度4以上の地震が発生しました.
A2.1年間で震度4以上の地震の発生確率が30%未満の都道府県は17カ所でそのうち9カ所では地震がおこりませんでしたが,8カ所では地震が起こりました.なお,震度4以上の地震が起こらなかった都道府県は15カ所です.
A3.1年間で震度4以上の地震の発生確率が30%以上70%未満の都道府県・地域9カ所で,その内5カ所で地震がおこり4カ所では地震が起こりませんでした.
(地震が複数回発生したとしても1回とカウントしていることに注意してください.このカウントの仕方だと19+8+5=32回震度4以上の地震が起こったことになります)

1年予測成績(適中率と予測率は「赤」予測を評価する指標,安心率1と安心率2は,「青」予測を評価する指標です.どの数値も高いほど成績が良いことを示します.「黄」予測については評価しません.)
適中率:(予測回数の内,何回当たったか)=19/21=0.90
予測率:(地震発生回数の内,何回当てたか)=19/32=0.59
安心率1(地震がないと予測した青予報の都道府県の内,地震が起こらなかった割合):9/17=0.53
安心率2(地震が起こってない都道府県の内,青予報だった都道府県の割合):9/15=0.60

続いて,2015年の3ヶ月予測の成績です.

B1.3ヶ月間で震度4以上の地震の発生確率が70%以上の都道府県は10カ所でした.1-3月,4-6月,7-9月,10-12月とそれぞれ「赤」予測をしたとして40回の予測回数となります.その内,30回で地震が発生しました.
B2.3ヶ月間で震度4以上の地震の発生確率が30%未満の都道府県は31カ所ありました.上記と同様に,各4回「青」予測をしたとして124回の予測回数となります.その内,105回(105箇所)では地震が起こりませんでしたが,19回では地震が発生しました.なお,震度4以上の地震が起こらなかった都道府県は(3ヶ月毎にカウントすると)131箇所でした.
B3.3ヶ月間で震度4以上の地震の発生確率が30%以上70%未満の都道府県は6カ所ありました.上記と同様に,各4回「黄」予測をしたとして24回の予測回数となります.その内,地震が発生したのは8回でした.

3ヶ月予測成績
適中率:30/40=0.75
予測率:30/57=0.53
安心率1:105/124=0.85
安心率2:105/131=0.80
このように簡単な計算で,平均発生間隔(T)の1.2倍程度以上の期間を取れば,地震をかなりの確率で予測することができます.

参考
単位時間(1日)当たりの平均発生回数は1/T
下記の
http://kogures.com/hitoshi/webtext/stat-kakuritu-bunpu/index.html
の式から、平均発生回数1/Tの時,1日以内に地震が0回発生する(つまり発生しない)確率Pは
P=exp(-1/T)
となります.ここで,(1/T)の0乗は1,0!も1です.

上記から,t日以内に地震が発生しない確率PtはPのt乗ですから,Pt=exp(-t/T)
よって,t日以内に1回以上地震が発生する確率は
1-exp(-t/T)

参考文献
小泉尚嗣・今給黎哲郎,2016,気象庁震度データベースを用いた地震予測,日本地震学会ニュースレター,68,NL6,22-25,http://www.zisin.jp/modules/pico/?cat_id=39.