「胆振の地震は人工地震」をぶった切る

2019/04/29

大地震のたびに垂れ流されるウソ

まったく、この国の人々はどうなっているんでしょう。
この手のタイトルでまた書くことになろうとは、思いもしませんでした。

しかし今回は、元首相まで明らかに誤認発言をしてしまうので、真っ正面から「全然違いまっせ」と言わざるを得えません。

2019年2月21日午後21時22分に北海道胆振地方中東部で起きた地震について相変わらず、やれ核実験だ、やれ某国の陰謀だ、やれ人為的なものだと寝言を申すお寝坊さん、そしてそれをむやみに拡散する考えることを放棄した人が絶えません。

核実験がウソであることの根拠は熊本地震のときに書いたコチラの記事を見ていただくとして、今回は、前回の記事以外の視点も加えます(元首相の言い訳がおかしいことも)。

地震の科学初級の方でもわかる、すべての人工地震説がなぜウソか

他の業界は知りませんが、公的機関がとくに注釈をつけずに発表した地震(=自然地震)について外部の人が述べた、すべての核実験説・人工地震説はウソと、まず断言します。
なぜ断言できるかというと、この業界をよく知っているからです。

なぜウソとわかるのか。
「震度とマグニチュードの違いがわからない」という、地震の科学について初級の方でもウソと疑うことができる視点を提供します。

・非核三原則を遵守する日本が仮に「核をこっそり作る」か「核をこっそり持ち込ま」せて、「核をこっそり保有し」て核実験をこっそりやるとして、国内外の人間が簡単に気づくようにやるか?国民の命に直接的な危害を及ぼすか? ここに気づけば「こっそりやってるわけない」ことがわかります。

・業界には、純粋に科学が大好きな人が集まっているので(金目当てなら他の業界へ行く)、ありもしない人工地震を裏付けるためのデータ作成などやっている暇がない。
(暇がないのは、アホみたいに忙しいから。研究として、過去の論文読み、理論構築、観測、解析(含む・プログラミング)、観測点のメンテ、学会発表、論文執筆があります。大学所属なら、これに加えて、学生のお世話、会議(だらけ)、外部機関の役職兼務、予算要求事務など研究と無関係な仕事も山ほど降ってきます。研究機関所属なら、役所らしいさまざまな手続き・事務処理があります。)

こういってはなんですが、とくに大学の教員が置かれている環境は、民間企業でしたら確実に「ブラック」といわれるほど激務です。
体力がないと、とてもじゃないと務まりません。
この辺は日本が長年抱えている問題なのですが、それは専門的に論じている人が多くいるので、その方々にお任せします。

地震をちょっと知っているが知りたい、すべての人工地震説がなぜウソか

ここからは、少し固い話です。

今回の地震で、元首相がtwitterで「これらの地震は人為的災害」と言ってしまいました。
批判の嵐に遭い、それでもめげずに「人為的なものだ。認めろ」との持論を展開しています。

さて、東大工学部を出て博士取得、東工大助手というアカデミアを経由したバリバリの理系の人が(そして複数の点で筆者のセンパイでもある方が)、なぜこんなうっかりな発言をしてしまったのでしょう。

元首相が気にしているのは「CCS」というものです。
工場等の二酸化炭素が大気中に撒かれる前に回収し地中に戻してぎゅっと閉じ込める、という技術です。
元首相はつまり「二酸化炭素をムリに地中に埋めるから地震を起こすんだ」といっているに等しいです。

2018.9.6、2019.2.21の地震は、本当にCCSが原因で起きたのか。
小難しい情報を見なくても誰でもわかる視点は、
CCSを実施している場所と、両地震の震源の位置が全然違う
です。
図のとおり、CCSの実施場所は海底下1kmちょっと地下です。
2018.9.6、2019.2.21の地震は、内陸の深さ30km超です。

この時点で、CCSと2018.9.6、2019.2.21の地震は無関係そうだと気づくので、これ以上議論を続けるのがばかばかしいですが、それでも不安な人のためにもう少しだけ続けます。

地中に何かを注入したり、地中から何かを取り出したことで地震が起きた事例は、世界を見るといくつか存在します。
スペインでは、長年に亘って地下水をくみ上げたせいで地盤沈下による地震が発生。
アメリカでは、天然ガス採掘が原因と考えられる群発地震が発生。

ここで、そもそもこれらの地震の性質を見る必要があります。
・地盤沈下による地震:地下にあったものをなくしたわけですから、地盤沈下してその周辺が揺れるのは当然。
・採掘による群発地震:微少地震がほとんどですが、M4やM5もまれに起きます。しかし、震源が浅いのが特徴です。

これらの地震を起こした範囲の余震分布を見れば、さらに明らかに自然地震とはまったく異なることがわかります。

なお、CCSと地震の関係、とくに2018年9月発生の北海道胆振東部地震との関連調査をした報告書(PDF)が存在します。
この報告書では、
・地震を起こさないような圧力レベルまでしか注入していない
・観測を続けているが、実際に微少地震さえ起きていない
・CCS実施の地層と、地震を起こした地層に連続性がない
などが書かれています。

陰謀説を信じたい人々

結構たくさんいますね、陰謀説を信じたい人々。
なので、「信じるか信じないかはアナタ次第」が決めぜりふのあの番組がウケるんでしょう。

周囲にもいる陰謀説を信じたい人の特徴は実にシンプルで
自分が信じたい陰謀説に当てはまらないことが出てきたら見なかったことにする
です。そして、
その業界のことや経緯を知らない
という特徴もあります。あくまで主観ですが。

まぁでもいいです。
そもそも思想は自由ですし、おそらく、陰謀説を信じているほうが楽しいから続けてるんでしょうし、それを周囲に話せば物知りだと思ってもらえて虚栄心が満たされるから拡散するのだと思いますし(あくまで想像です)。

ただ、一つ言いたいのは、
陰謀説を信じたい人が楽しむために事実と違う内容を垂れ流して苦しむのは、被災者だ
ということです。

地震の被害や大きな地震に遭った人は、命を脅かされたわけですから、計り知れない不安に襲われています。
そこへ、心ないデマを流すと不安が助長されるのです。
もしかしたら、辛い目に遭っている自分たちを弄んでと憤っている方もいらっしゃるかも知れません。

ここでふと思ったのですが、陰謀説を信じている人はそれがデマだと思っておらず「自分が本当のことを教えてあげる」と親切心でやっているのかもしれません。
もしそうなら、つける薬がありません。どうしましょう。
そのときは、われわれのような「は?陰謀説?」と思っている人が、不安に思っている方々に対して「あれはウソよ、大丈夫」と言ってあげるのが肝要でしょう。

情報に惑わされるのは、正しい知識がないから。
でも、全員が全員、正しい知識をもつことは不可能です。
ですから、その分野に興味のある心ある人が、確かな知識をもったうえで判断し、知識がない人に対して根拠をもって確かな情報を伝えてあげてください。

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