地震グッズで思うこと

2019/04/29

「地震グッズ」≠「防災グッズ」である。
東大赤門入ってすぐ左側に、大変モダンでシンプルな空間の、
コミュニケーションセンター(以下、UTCC)という
東大関連グッズ販売所がある。
このUTCCで売っている東大関連グッズは、
ただ単に文房具に銀杏のマーク(東大のシンボル)をつけたものではない。
東大で開発された、オモシロイ製品を売っているのである。
#正確に言えば、ただUTCCのマークをつけただけの製品もあるが。
たとえば、東大で開発したサプリメント、
東大検見川の敷地内で発見された古代の「蓮の実」を発芽させ
開花した「大賀蓮」の香りを再現した香水、
などなど、説明が面倒くさいものから簡単なものまで様々である。
そのモダンでシンプルなはずのUTCCの前を通りかかると、
なにやら、だいだい色のその場に似つかわしくない重たい丸い、
そして懐かしいものが。
「…。もしや、海底地震計?」
近づくと、やはり、海底地震計である。
Shinken_fair.jpg
なぜに、この空間に。
あまりに似つかわしくないので、shopにin。
すると、やはり空間に似つかわしくない展示方法で、
東大地震研究所(以下、地震研)の紹介がしてあるではありませんか。
写真のパネルの左上には手書きで
「関連商品販売しております」。
いつの間に地震研が地震グッズなど作ったのだろうと、shop内を探索。
入った右側に、これは空間に似つかわしい陳列で販売されていた。
商品は、3つ(UTCCのこのページを参照)。
さて、ここから考察を加えてみる。
まず、商品そのもの。
世界の震源分布などネット上のその辺で大量に落ちているので差はないと思ったが、
一応どうやら「地震研で取れたデータ」に限定している模様。
#ただし、他の機関で取ったデータで作っても同じ結果が得られてしまう。
なかなか考えたな、と思ったのが、
このたった一つの絵で3つの商品を作ったこと。
まあどれもちまたに存在するカタチの商品ではあるが、
3つの商品の共通キーワードは「教育」。
まとめると、
「研究教育機関が研究データを使って教育に関するモノを作った」
ということになろう。
さて、ここまでは大学の研究機関が思い浮かびそうなことなので、
いちおう中小企業診断士であるからには、それ以上のことを考えたい。
まず、売り方。
何の宣伝もしていない。
#そもそもUTCCが「売らんかなとはしていない」ことはさておき。
いやむしろ、手前に展示してあるゴツイ海底地震計が、
「地震の展示?」と思って入った人にはがっかりで、
しかも素人には、売っている商品と海底地震計との関連が見えない、
ということで、逆の宣伝効果になっている。
また、そもそも、なぜ地震研が商品を売るのか、
なぜ、その商品が選ばれたのか、はたまた、
地震研つながりの商品を作る必要があったのか、
が疑問である。
なぜ疑問かというと、販売行為をするに至った真の意図が見えないからだ。
別に、買う人にとっては意図など見えないでよろし、
というのが大方の意見であろう。
しかし、売る側に立つと、意図のない商品を販売するのは大変難しいのだ。
#だから、宣伝が“できない”のかも知れない。
実は、店舗内の陳列付近には
「この売上の一部は義援金に回しますよ」
との文句があるので、今回ばかりはそれが意図なのかも知れない。
しかし、私はそれだけではもったいないと思うのだ。
地震研には他にはない、もっとも重要なブランド価値がある。
・日本で「地震研究所」と名のつくところは、地震研だけ。
・地震に関する単独の研究機関として最古の研究機関である。
・老若男女、地震といったら地震研、とイメージできる。
つまり、「老舗」なのだ。
老舗には、ファンとマニアが多い。
さらに、一見さんをも引き込む力がある。
私だったら、販売行為にこのブランド価値を大いに利用する。
もし地震研が今後商品販売に力を入れるのであれば、
せひ相談していただきたい。
他の研究機関でも、関連グッズ販売に踏み切るなら、
助力したいのでご一報いただきたい。
ただし、単に商品を作る、では意味がない。
そこに、何らかの意図を持たせてほしい。
・商品を販売することで、研究費の一部を担いたい。
・商品を買ってもらうことで、研究のことを理解してもらいたい。
・商品で知名度を上げて、優秀な若手を集めたい。
などなど。
その意図もイマイチ決めきれないであるならば、
その段階から相談を。
アナタが「何をしたい」のかを引き出します。