「熊本地震は人工地震」をぶった切る

2019/04/29

2016年4月14日から熊本県を中心に続発している地震について「これは人工地震だ!」というけしからんモノがいる上に、それを拡散している残念なヤカラがいます。
「益城町の地震波形にP波がない」というのが根拠のようですが、震源直上なんだから、震源と地震計の距離が近くてP波が見えにくいのは当たり前
波形で、S波の立ち上がり付近をアップにすれば、P波は見えてくるものなので「アホか」の一言です。

管理人はお行儀が悪いのでこの程度でこういうヤカラはバッサリ切りますが、地震学者の小泉尚嗣さん(滋賀県立大学)は、「そもそも人工地震でM7の地震を起こせるか?」を科学的に説明してくださいました。
ご本人の承諾を得て、全文掲載いたします。

—–ここから—–
人工地震でM7クラスの地震が起こせるかどうかを考えてみます.

4/16の未明の熊本の地震の震源が深さ12kmとされていますから,まず,深さ12kmまで孔を掘らなくてはなりません.
ロシアのコラ半島で実際に深さ12kmまで約20年かけて掘った例があります.費用は不明です.
ドイツでも1990年から4年かけて9kmまで掘った例があります.
このときの費用は約400億円です.
しかも孔の大きさは,地表付近で70cm(28インチ),9kmの底付近で16cm(6.5インチ).
まず,深さ10kmまで掘るのが,費用としても時間としても大変です.
さらに,それを人知れずやらなくてはなりません.

以上の点を克服したとして,通常行われる人工地震で最大級のものはTNT火薬10トン程度でエネルギーにして、42GJ(ギガジュール)程度です。
これは、マグニチュード4の地震の波動エネルギー(約63GJ)にの2/3に相当します.
ただし、地震のエネルギーのごく一部のみが波動エネルギーになっていることを考慮して、その比を10%程度とすると、マグニチュード4の地震の総エネルギーは630GJということになります。
したがって、最大級の人工地震15発分=TNT150トン=M4の地震ということになります。

4/16未明の地震のマグニチュードは7.3とされていますが,暫定なのでとりあえずM7とすると,M4の地震のエネルギーの約3万2千倍.
上記の最大級人工地震の48万発分=TNT火薬4,800キロトン=4.8メガトン.
直径2mの孔を12kmまで掘って(莫大な費用に加えて何年かかるやら・・・),それを全部TNT火薬で埋めても60キロトンしかありません.
→無理です.

広島型原爆がTNT火薬15キロトン相当といわれるので,原爆を使っても無理です.
水爆ですとTNTにして数メガトン以上が可能ですから,エネルギー的には可能です.
でも,直径で1mオーダーの孔を12km極秘裏に掘って,水爆を極秘裏に日本に持ち込んで,それを極秘裏に爆発させて・・・.
→何のためにやるんでしょうね.
—–ここまで—–

オカルト情報を作ったり拡散したりするのはオモシロイかも知れませんが、さすがにここまで根拠がしっかり書かれると、拡散することが恥ずかしくなってくると思うんですが、拡散したい人は、こういう記事を見つけても見なかったフリをするんでしょうねぇ。
何が楽しいんだか。