老舗超高層ビルの耐震性~サンシャイン60~

2019/04/29

A級戦犯の死刑が執行されたスガモプリズンこと、巣鴨拘置所。
1971年、葛飾区小菅に東京拘置所として引っ越しをしてから7年後、
巣鴨拘置所跡に当時アジア最高層のサンシャイン60が完成しました。

sunshine

低層階に複合施設やアミューズメントパーク、
上層階に高級レストランや水族館、
サンシャインシティとしてサンシャイン60の周辺に
ホテルや博物館などを配し、
36年経った今でも東京は池袋の人気スポットです。

1978年建立ということは、新耐震基準法が施行された1981年より前です。
耐震性能が非常に気になります。

さっそく(株)サンシャインシティのHPを見ると、耐震性の記述があります。

“新耐震基準を上回る水準。構造的には、関東大震災規模の大激震にも耐え得る、
 第一級の耐震安全性を確保しています。”(同社HPから引用)

うーん、これじゃ定性的すぎてさっぱりわからない。
それに、こういった記述はほうぼうで見かけますが、思わぬワナが潜んでます。

91年前の今日、1923年9月1日11:58a.m.に発生した関東地震(災害名:関東大震災)は、
相模湾を震源とするM7.9の首都圏直下型地震で、約10万5,000人が犠牲となりました。

ここまでは誰もが知る情報ですが、関東地震では、地域によって揺れの大きさに
かなりの差があったのです。横浜や房総半島南部はのきなみ震度7。
東京区部東部も震度7~6弱。
ところが、東京区部西部は震度6弱~5弱。
多摩は5弱以下です。

ということで、何がワナかというと、
「関東大震災規模の大激震にも耐え得る」という表現は、
みなさんが考える震度7ではなく、巣鴨拘置所のあった場所が
関東大震災で揺れたレベル、つまり震度5弱である可能性もあるのです。

このHPがそんな意地悪な表現をするとは思えませんが、
つまるところ、このような抽象的な表現がマズイんです。
せめて「震度×にも耐え得る」とすればよいのです。

で、肝心の耐震性は具体的にどうなんだとさらに調べると、
天下の鹿島建設のHPに、こんなのがありました。

サンシャイン60 長周期地震動対策工事に着手

長周期地震動対策のための日本初の工法だそうです。
今の超高層ビルは、基礎部分に免震装置を入れますが、
まさかサンシャイン60をヨイショと持ち上げて基礎部分に
免震装置を入れるわけじゃないよなぁ、と思っていたら、
なんとフロアに何百箇所もダンパーをつけていくそうです。
免震じゃなくて、制震でした。
それにしても、荷重はどれだけ増えるんでしょう。

ちなみに、この工法の成果の程は知りません。

長周期地震動に対する実大実験もまだ数件しか行われていませんし、
それに、日本初ということは、この装置はまだリアルな巨大地震を
経験してないということですから。
(もちろん、理論的には高い性能ということで採用されたんでしょう。
 鹿島のなかでの実験もいろいろされたんでしょう)。

建築の専門家ではないので評価はやめて、
新耐震基準法施行前の超高層ビルは日本に意外に存在します。
こういった超高層かつ人気のビルには、
一刻も早く強固な耐震補強が必要です。

サンシャイン60の制震装置は設置がもう始まっていて、
2年後の2016年9月には完了するそうです。
ということで、その日までは巨大地震が起こらないことを祈りましょう。