オカルト地震情報を拡散する人々

2019/04/29

この図を見て欲しい。
さるキュレーション(※)サイトの「地震」カテゴリへの投稿のアクセスランキングである。
※ネット上に無数に存在する情報から、その分野に詳しい人が良い情報を選別し、コメントを付けて(=情報を新しい付加価値を付けて)再配布すること。
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キュレーションの定義に照らせば、そもそもこのランキングの大部分がNG投稿ではあるが、このサイトは当初のキュレーションサイトからただの情報共有サイトに変わったので、これらの投稿は問題のない範囲である。

さて、では投稿の中身であるが、2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震を経験し、地震に対して世界で一番知識や知恵を身につけた日本人(いや、3.11前からそうではあるが、その知的レベルが飛躍的にアップしたのは間違いない)であれば、これらの地震情報がただのオカルトであることは十二分に承知しているはずである。
それなのになぜ、その情報に価値があると感じ、多くの人とシェアしようとするのか。
これが疑問でならない。

そこで、シェアするとどんなことが起きるのかから、彼らがなぜこういった情報をシェアするのかを考えてみる。
ちなみに、元ネタを提供する人は、ただの商売か思い込みの激しい人であるので、取り立ててここで話題にする必要はない。

オカルト地震情報をこのサイトに投稿すると、
・他の人がその情報をシェアしたくなるとリキュレーションする
・他の人がその情報を良いと思うと、facebookのいいね!のようなスターをつける
・他の人がその投稿者をいいと思うと、フォローする
・投稿すること自体を含め、これらのアクションが行われると、投稿者にポイントがつく
簡単に言うと、こんなところである。
仕組みは感心するほどたくさん考えられているのでこの限りではないが、褒められる経験が少ない日本人にとって「褒められポイント」がどんどん溜まるのは嬉しいのだろう。
さらに、褒められれば褒められるほど階級まで上がるのだから、役職名で上司を呼ぶようなヒエラルキーのなかにいないと不安を感じる日本人にとっては「昇格」は何よりのご褒美なのであろう。
これを考えた人は、日本人心を巧みに仕組みに活かした、なかなかの切れ者である。

それはさておき、こうして投稿者は、投稿の内容よりもよりシェアされやすい情報を取捨選択していくようになるのではないだろうか。
そう、「人の役に立つ・立たない」の視点ではなく「自分がいかにポイントを稼ぐか」の視点で。

もしくは、UFOと同じ心理なのかも知れない。
科学的根拠がないと分かりつつも「UFO見たよ!」と一言言えば、「え~ホント!?」「すごいね、どんな形だった?」「宇宙人は見た?」など、発言者は一瞬にして注目の人物となる。オカルト地震情報投稿者も、ポイントのことは特に考えずに、周囲から「ホントッ!」と言われたいだけなのかも知れない。

この2年で、「今そこで起こったこと」か「よほど信じがたいビックリ情報」であれば容易に拡散することを痛感した。
知的な日本人であれば、オカルト地震情報が拡散したとしても、それがオカルトか否か瞬時に判断できると信じたい。しかし、少なくとも子供や地震をあまり知らぬ外国人には、オカルト地震情報をまともなもの思われないよう、投稿するときは「これはオカルト地震情報です」と付け加えていただけるとありがたいと感じる次第である。