ほぼ知られていない国民の義務 ~異常な地象・水象を見つけたら通報せよ!~

2019/04/29

「川の水位が異常に高いなぁ。まあこの豪雨だから仕方ないかぁ」
「あっ、地割れ。ここは崖だからよくあることか。避けて歩こう」
「おやおや、急激に海岸線が引いていくぞ。地球は不思議だなぁ」

そんな、地球の諸現象に敏感な愛すべき地球ヲタなあなた。
地球科学的には適切な“気づき”でありバッチグー(死語)だが、法的にはNG対応である。

地象・水象の定義はコチラを参照

災害対策基本法。
公布は1961年。1960年チリ地震津波がきっかけかと思って調べたら、契機は1959年伊勢湾台風だった。被害者5,000人超という、その後50年以上たった今でも台風観測史上最大の被害だ(出典:消防防災博物館HP)。

災害対策基本法、第五章第二節「警報の伝達等」第五十四条「発見者の通報義務等」第一項に、地球ヲタのみなさんの義務が以下のように規定されている。

【災害が発生するおそれがある異常な現象を発見した者は、遅滞なく、その旨を市町村長又は警察官若しくは海上保安官に通報しなければならない。】

義務ですよ、義務。
だから、冒頭のように見つけたのに感想だけ言って去ってしまうのは、法的義務に背いた行為なんです!

続く第二項以下を見ると、

2 何人も、前項の通報が最も迅速に到達するように協力しなければならない。
3 第一項の通報を受けた警察官又は海上保安官は、その旨をすみやかに市町村長に通報しなければならない。
4 第一項又は前項の通報を受けた市町村長は、地域防災計画の定めるところにより、その旨を気象庁その他の関係機関に通報しなければならない。

つまり、

という経路で、われわれ地球ヲタ、もとい国民は、異常な現象があることを「迅速に」お国にまで到達させねばならないのだ。

しかし、はて、どう考えてもその辺をぷらぷら歩いてる人が市町村長のケータイ番号を知ってるわけがないだうし、「隣を歩いてる人がたまたま海上保安官だった」な~んてことも激しく低い確率だろう。
ということで、まあとどのつまりは警察官へ通報するんだろう。

ここで謎が1つ。「消防官(消防署)」が選択肢に入ってない。

「堤防が崩れそう!」って場面を見て、とっさに「警察に伝えなきゃ!」と思いつく人はどれくらいいるだろうか。

窃盗や傷害等の人為的な異常事態は、日本人なら条件反射で警察に通報する。
しかし多くの人は、火事のみならず、地割れや河川の水位の異常などは消防署に通報するだろう。そうでない人は、どこに通報したらいいかわからないのだろう。いや、そもそも通報すべきものなのかさえ知らないのが現実ではなかろうか。

まったく、ここにも自然大国日本の防災教育のお粗末さが垣間見える。

ま、119に電話しちゃっても、きっと消防署から警察に連絡してくれ、警察から先は規則にのっとって通報してくれるんだろう(と期待したい)。でも、まさかのまさかで「ちょいとあなた、消防署にそんな連絡しても困るんだよね。うちの管轄じゃないからさ~」とか、超ド役人的発言をされてしまって、おたおたしている間に堤防が決壊して多くの人が被害に遭ったらどうするんだ、と心配をしてしまうのは筆者だけではなかろう。

そんな不安が脳裏から離れず、ここで「災害が起こりそうな現象を見たら、警察に通報しよう!」と声高らかに謳うのである。