2012.1に発火した過熱報道の裏側

      2013/05/20

いやはや、驚く。
メディアはまだ1月の4年以内に70%でネタを書いている模様。
そして自分の周りもまだこのネタでざわついている人がいる。
ってことで、独自取材を敢行した。
【重要なこと】
その結果、マスコミも研究者側も一番伝えるべき重要なことはこうだ。
備えよ
「んなこた、わかってるんだよ!
何を信じりゃいいのかわかんないから慌ててんだよ!」
はいはい、じゃ、もう一つ伝えるべき重要なこと。
いつ、どこに、どれくらいの大きさの地震がくるかを、
多くの人が臨む正確さで予測できるシステムはないが、
地震は必ず来る。

短気な人、または非常に理解の深い人は、読むのをここで止めてよい。
しかし、1月後半から無駄に続く一連の報道に対し、
真実が知りたい、と思っている人は読み進めて欲しい。
【経過の真相】
正直、経過については全部ここに書いてある。
地震研webサイト
ここに書いてあることにウソはないことを確認した。
そして、ここに書いてあること以外も確認した。
残念ながら本webサイトは、
研究の内容、研究内容への注釈、マスコミ情報への反論、一連の経過
がごった煮状態になっているので読む気が削がれる。
そこでここでは、経過(そのときに起きたこと)に絞って記す。
◆2011年9月
・地震研究所談話会というオープンな発表の場で、首都圏の地震活動についてある一つの研究結果が示された。
・談話会には研究者のみならず多くのマスコミが出席していた。
・首都圏でM6.7-M7.2の誘発地震が発生する確率について、まったく同じことを意味する2種類の数字を発表したところ、マスコミの反応はそれぞれ次の通り
今後30年間に発生→98% : 反応なし
今後4年間に発生→70% : 騒然
・この研究は他の研究者から質疑応答の嵐にあった。
・この研究は、あらゆる誤差を含むし、今後数字が大きく変わる可能性があることなどの「不確実性(※)」を多く孕むことが質疑応答で明らかになった。
・一連のやりとりをマスコミは聞いていた。
・この研究はけっきょく記事にはならなかった。
※不確実性:ここでは、前提条件などはあくまで仮定であり、その仮定があってるかどうかはわかんないよ、ちょっと仮定やデータを変えると結果が変わっちゃう可能性があるんだよ、くらいの意味。
◆2011年11月
・9月に発表があった研究について、研究リーダーが某新聞社から単独で取材を受けた。
(取材の具体的内容については不明)
◆2012年1月
・9月に発表があった研究について、9月で散々議論され明らかになった不確実性について一切言及しない報道がなされた。

以上、ここまでが独自取材による事実の列挙だ。
賢明なみなさんは、ここまで読んだだけで「な~んだ」と合点がいったと思う。
これ以降は、自分の考えをつらつらと書く。
「事実のみを知り、あとは自分で判断したい」
という主体性の強いアナタは、ここで読了であろう。
「それでもなんだかキモチ悪い」
と思っている疑り深いアナタ(いや、私?)だけ読めばよい。
【疑問】
1.9月に「報道の価値なし」と判断された研究(※)が、なぜ11月になって突然取材対象となったのか。
※報道がされなかっただけであり、この研究が価値がないわけではない。研究とは、あらゆる人があらゆる手段を尽くして多方面からなされるべきものであり、この研究もその一つ、というだけの話である。
2.11月の取材では、何が話されたのか。
3.9月の時点で不確実性まで伝わっていたのに、なぜ記事の段階で不確実性について言及しなかったのか。
4.なぜ、世間が大騒ぎしてしまったのか。
5.他のマスコミもなぜ最初の報道に従って不確実性を削ぎ落とした報道を垂れ流し続けたのか。
6.なぜ未だにマスコミはこの研究に関連した記事を出し続けているのか(主に週刊誌)。
【疑問に対する個人的見解】
ここからは、まったくの予想である。
事実を知っていたり反論がある場合は、実名でどしどしご意見が欲しい。
1.なぜ11月に突如取材?
自分は昔、雑誌を作っていた。よくネタに困ったものだ。月刊誌で困るんだから、週刊誌や日刊紙はどんだけ大変だろうと日々思っていた。
これを思い出し、もしやと思って気象庁の広報ページを確認した。
「平成23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震」について(第58報)
やはり...
このPDFから、10月は3.11以降一度も震度5以上が起きなかったはじめての月であることがわかる。
次に10月の地震研談話会の演目を見てみると...
やはり...
一般お人にわかりやすい演目が一つもない(理論や計算ばかり)。
最後にキュレーションサイトONETOPI地震を見てみると...
やはり...
その前までのよりセンセーショナルなつぶやきがない。
ということで、ネタに困ったうえでの取材だったのかもしれない(根拠のない予想)。
ネタがないからネタがありそうなところに出向くのは、記者として正しい姿勢であることは付記しておく。
2.11月の取材内容?
こればかりは当事者どうししか知りえず、さすがに情報が得られなかった。
3.なぜ不確実性に言及しない?
前提A:11月に取材に来た記者は、9月の談話会にいなかった。
可能性1:11月の取材で不確実性について聞いたのに、記事にしなかった。
可能性2:11月の取材時に、不確実性についての話が出なかった。
前提B:11月に取材に来た記者は、9月の談話会にいた→不確実性の話を聞いていた。
可能性1:11月の取材時に、不確実性についての話が出なかったから敢えて書かなかった。
可能性2:11月の取材時に、不確実性について「書くな」と言われた。
しょーじき、「前提B-可能性2」はあり得ないだろう。そんなことを言うアホ研究者は存在しない。
「前提A-可能性2」も研究者なら考えづらい。
すべての研究において不確実性はつきまとう。
とくにこの研究の場合はそれがかなり大きいものであるから注釈を加えないわけはないと思う。
万が一あるとすれば、9月に聞いてると思い込んで話さなかった可能性である。
残るは「前提A-可能性1」「前提B-可能性1」だ。
これらは、残念ながら確認が取れなかった。
4.なぜ、世間が大騒ぎ?
なにやら「1/25に大きな地震が起きる予知夢を見た」とかいう、まったく信用に値しない情報がネットで蔓延したようだ。さるIT関連の情報通によると「その記事と、このいかがわしい内容を結びつけた人が多かった」とのこと。
いい加減みなさん、「予知夢」とか信じるの止めましょうよ。
5.他のマスコミも?
誰が記事にしたのかは知らないが、9月に発表を聞いたはずの記者が「報道の正確性」に忠実であれば、このような誤解を生む記事作りはしなかっただろう。忠実性が足りなかったのか、他の記者が書いたのかはわからない。
もう一つの可能性は、この記事が出た時点での東大地震研のHPでの説明に、不確実性の説明が抜けていた点だ。
これを見たら確かに「ええ!? なんて数字!?」と思ってしまっても仕方がない。
ちなみに今はすっかり完璧に言及されている。
評価方法が違うし、仮定の取り方で結果も変わるのは研究者のなかでは常識っちゃ常識だから、わざわざ書かなかったのかも知れない。研究は、相手が知りたいことを正しく簡潔に伝えるのがElegantであり、あれこれオマケのように書き足すのは美しくないからだ。
6.なぜ未だに?
経過を知ってしまうと「ああ、またか」と落胆して終わりなのだが、知らないとこの一連の騒動には「物語性」がある。
いや、「物語性」を付加できる。
だって、
マスコミがセンセーショナルに発表

世間、大騒ぎ

地震研がHPで補足

さらに番組作り・誌面作り

視聴率・読者増

地震研が補足の補足

さらに番組作り・・・
エンドレスモードである。
良心的なみなさんには、この辺の「情報操作がウマイ業界」と「情報操作がヘタな業界」の違いをわかっていただき、今回の騒動を判断していただきたい。
何しろ地球科学業界は、どっかの超巨大マネーが動くさる(複数の)業界と違って利権争いがない。
そのため「汚い動き」がない(少ない?)。
だから、「情報を操作して、自分の懐にウッシッシ」と考える人もいない(少ない?)。
だって、そんなことやったってお金、入ってこないんだもん。
変に情報を操作すれば、多くの同僚から非難を浴びるだけ。
あなたがこの業界にいたら、情報操作をしようと思いますか?
思いませんよね?
だって、旨みがないんですもん。
むしろ、苦みが残るだけ。
もうちょっとコンパクトに書くつもりが、長くなってしまった。
自分が研究を続けていても、Elegantな論文は期待できませんな。


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